君と僕と彼女のこと                    A n o t h e r     D o o r
















”健気だね” と呟いた     あの時のクリスマスを思い出す





急に冷え込んだ12月のクリスマス・イヴ。
朝から天気予報では雪と出ていて、その通り今にも薄鉛色の空から白の破片が舞い落ちてきそうだった。



「手塚が帰る」 と彼女から連絡を受け、3年振りに一緒にクリスマスを過ごすのだと言った彼女をひやかし、笑って電話を切ったのは1週間前のことだ。
片想いだった頃を思い出せば、考えられないと笑ってふと窓の外を見ると、緩やかに降り注ぐ白い雪。




そう言えばあの時も雪が降っていた。




高校3年の2学期の終業式は24日で、この機会を逃すまいと学校中が浮足立って朝から逃げている人間も少なくなかった。
僕もその中の1人で、朝は何とか逃げきったものの放課後は一杯一杯で、どうにかこうにか屋上へ身を隠した。



扉を開けると先客があったようで、振り返った彼女と眼が合った。



「不二くんも大変そう」
「おかげ様でね」

そう言って笑うと彼女の隣に立って、フェンスから下を見下ろした。




「…健気だね」




そこには僕と同じように、どうにか集団から逃げ切ろうとしている手塚の姿があった。




その呟きに彼女は困ったように、僅かに微笑んだ。
いつの間にか雪がちらついていた。








そんな彼女も卒業の時に想いを打ち明けて片恋に別れを告げ、そして現在がある。




卒業式の後、"ありがとう"と秘かな協力者である僕に囁いた彼女の笑顔は今でも記憶の中にある。
本当に良かったと、そう思った。

そして今も、君が幸せであることを祈っている。






Merry Christmas...