はっきり言葉にしたり、されたりしたことはなかったけれど。

何となく、予感めいたものはあった。















G　o　o　d　b　y　e　　　　d　a　y















少しだけ疲れた表情で、彼女は静かに眠っていた。
ベッドサイドの淡い光が、そっと睫毛の影を落とす。起こさないように手を伸ばして、その頬に触れた。





”昔より愛が足りない”





ほんの数時間前、ぼんやりと彼女が呟いた声が耳の奥で繰り返される。
きっと何の気なしに　――――　ふと、口からこぼれて出たような口調だった、から。
その残響は余計にでも、僕の胸の内に鋭い破片のように、引っ掛かっている。








何となく、気づいていた。
きっと、二人とも解っていた。








それに気づかない振りをしながら、僕らが重ねてきた時間を君はどう思うだろうか。
少しずつ離れていく想いを感じながら、それでも、費やした君との月日を惜しみはしない僕がいる。





本当だったから。
たとえいつか解けてしまうような、か弱い絆だったとしても。





君を、愛していたこと。





それが、何よりの真実だったから。








彼女の手を握りしめて、自分の頬を伝う滴を見て見ぬふりをする。
次に君の眼が覚めたら、僕の唇はきっと紡ぐだろう。








別れの予感を確信に変える、言葉　を。