しばらく続いた雨が上がったある日、気晴らしにと二人で近くの公園へ散歩に出かけた。 「紫穂、ここに四つ葉があるぜ。あっちにもある」 見つけては指を差す俺を、子供みたいね、と彼女は小さく笑った。 「サイコメトリー使えば一発じゃないの?」 「使うまでもないさ、探し方にコツがあるんだよ。群れの外側からぐるっと内側に向かってチェックしていくんだ。 そのうえ雨上がりには見つけやすくなる――ほら、あった。これ紫穂の分な」 薫ちゃんたちにも持って帰るか?と摘みながら振り返れば、自分を見つめる思いつめたような視線とぶつかった。 彼女が小さく口を開く。 「ねえ、センセイ。もしもの話よ。私が名前もないただの葉で、この一面のクローバー畑のどこかにいるの。 ……もしそうだったら、センセイは見つけてくれる?」 (……ったく、マジな顔して何を言い出すかと思ったら……) 同じ目線のところまで立ち上がり、瞳を覗きこんで指先でその額を弾いてやる。 「……い、った、っ……!」 「バーカ、訊く方が悪い。そりゃ愚問ってヤツだ。 ……見つけるよ、俺は。絶対に」 たとえば君が生まれ変わって、野に咲く数えきれぬほどのクローバーたちに紛れようとも きっと俺は幾千の緑の中から 必ずただ一人の君を見つけてみせよう |
・最後のポエム(…)を使いたかったんです。四つ葉を摘む賢木!(笑) |